アラフォー毒女の彷徨

そういえば、わたしの勤めている店には

まっすぐ家に帰りたくないから銭湯へ行く、

という人がかなり多くいるみたいです。

私はいままで一回も銭湯に行ったことがないですし、ふだんから

「休みの日は自宅のお風呂でゆっくり」と公言しているので

銭湯に行く人の心境はぜんぜんわかりません。

私は、銭湯はもとより、温泉にも行かないので・・・

自宅のすぐ近くにもあるのですが

駐車場が満車になっているような健康ランドなどもってのほかです。

ただでさえ仕事で疲れてるのに、またお風呂で疲れそうで・・・

私は人と関わるのが嫌いなのかもしれません。

たとえ相手が女性であっても

赤の他人に裸を見られるのは気が引けますし。

同年代の女性が興味を示しているものは、

だいたいどれも私の好みに合わないものばかりです。

ただの食わず嫌いというのもたくさんありますが・・・。

しかし、それにしても思いのほか銭湯に行く人が多いというのはそれだけの

リフレッシュ効果があるはずですから

こんどの休みにでも意を決して行ってみるつもりです。

八百屋さんの声かな――ううん。魚屋さんの声かもしれないし。

もしかすると、スーパーの店頭にあるエンドレステープの声かも。

どこかにある商店街のアーケードを自転車に乗って走っているようだ。

人通りが多いので、本来は自転車を押して歩いたほうが

安全上よさそうなものだが

彼女はとても急いでいてそれどころではなかった。

万里の長城のようなアーケード。いったい、どこまで続くのだろう……。

彼女が近づくにつれ次つぎに店は開店していく。

明るい照明と色とりどりの魅力的な商品――。

どこからか聞こえる活気のある声。

大勢いるはずの小さい子供を連れた主婦たち。

そして、そこを通りすぎるとシャッターは次つぎと閉まって行く。

店は、ものの五秒と営業してないかのように

開店がはじまると、すぐに閉店がはじまる。

ふりかえっても意味はなかった。

前に進むための道しるべにはならない。

うしろにあるのは、薄暗い廃墟のような――

いま、おぼろげながら、シャッターの閉まった店のなかが見えた。

緑色の避難誘導灯の光に照らされて人影が動いている。

店内には誰も残ってないと思ったが、そんなことはなかった。

そこの社長ではないことは確かだろう。

社長は帰ったはずだ……。

まさか、社長など、はじめからいやしない。

彼女は思念を強めた。

やがて、どこかで見覚えのある、

ずんぐりとした貧乏くさい中年男の姿が浮かびあがる。

もしや、あの男がいるのだろうか。

だとすれば、悟られることをしたのは失策だった……。

「あなたはね、常連客について何もわかってないよ」

アドバイザーは机に頬杖をついたまま足を組みかえ、

片手だけで器用に缶コーヒーを開けた。

「みんなね、大売出しを目当てにしてるわけじゃない。

だいたい、こういった大都会の一等地に住んでる人たちが

寒空のもと開店前から並ぶなんて、やるわけないんだからさ。

メリットがないだろ。基本的に安いモノに対して購買欲がないから、

隣町の激安スーパーに行こうとしない。

自転車ですぐなんだけど、習慣なんだな。

ふだん自分が買いつけないスーパーに行くのは億劫だし

思いつかない。

だからふつうの生鮮品が多少相場より値段が上がっていることに

気づいていても、ほかのスーパーまで足を延ばさないものなんだよ」

彼女はまたネットで新しい相談所を検索してみた。

この異常な婚活難の状況においても、

どこかにまともな男は残っているはずだ。

なんとしてもつかまえたかった。

彼女は結婚相談所のフリーダイヤルにかけてみる。

しかし、そこからの声は――。

自分に会いたいと言う男に実際に会うと、ロクな人物じゃない場合が多い。

これは、いままでの経験でわかっている。

サンプルは枚挙に暇がないほど充実していた。

だからこそ逆に私が会いたい男というのは、

私のことをロクな女じゃないと思う確率が高いんじゃないかなって……。

私が会いたいと思う人たちは、みんな私よりも社会的ステイタスが高くて

相談員の話によると登録している女性からは引っ張りだこのようです。

年収はもちろん平均より高くて……。

だから絶対、私も彼らに見合うだけの女にならないと

彼らと会う資格はないんだと痛感しているんですよ。

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