フードコートで大豪遊

コモディイイダへ買い物に行ってくる」

といって

家を出た場合、一般的な主婦ならどのくらいの時間で戻ってくるのだろうか。

引っ越してきたばかりの町なら

土地勘もないので迷うこともあろうが、

もうかれこれ10年は住んでいる町だ。

自転車で5分といった店であれば移動時間は往復10分。

店内で30分くらい見て回ったとしても

理屈の上では1時間もあれば行って帰ってこれるはずである。

どうもおかしい。

ときどきこんなことがあるような。はて、

思い返してみよう。

そういえば去年の運動会のときも――どうだか。

わざとやっているのだろうか?

いや待てよ、

ろくでもない立ち話に進んで乗ずることもないと思うが、

またどこかの奥さんに往来で拉致されて

埒があかないゴシップにつき合わされているのだろうか?

あそこの住まいは持ち家なのか借家なのかと聞いたり

あっちの旦那さんは何の仕事をしているのかとか

そのほか名状しがたい質疑応答にあけくれているとも考えられなくはない。

世の中には他人の家の内情に尋常ならざる探究心を抱く輩がいるもんだから。

……あるいは、すこし離れた所に新しくスーパーが開店したのであろうか。

もし、ショッピングモールとよべるほどの規模であれば

当然のことながらフードコートなどもあるだろう。

そしてそれが、正真正銘のフードコートであるならば・・・

タコ焼き屋は必須項目であるはずだ。

だとしたら・・・

8個で380円とかいう意外なくらい安めのタコ焼きを一人で食べているのだろうか。

繁華街のタコ焼き専門店だと8個で580円はするじゃないか。

お祭りの屋台だって500円がせいぜいというにも関わらずだ。

とにかく、食べるなら食べるで連絡してくれてもいいと思う。

ぼくだってタコ焼きを食うなと言ってるわけじゃないんだし。

ま、それはともかく

どういうわけか、昼下がりのフードコートには

世間の人々を惹きつけてやまない “ サムシング ” があるようだ。

ある日曜日の午後

そのフードコートは家族連れで満席であった。

醤油ラーメンと餃子に半チャーハンのセット、それと

ふたにストローのささった透明なプラスチックのカップがある。

中には大量のクラッシュアイスと爽健美茶が入っていた。

それらを前にしたまま、30歳前後と思われるお父さんは

虚ろな目でぼんやりとしている。

冷えたカップからは結露がしたたりテーブルに広がっていた。

まだ幼稚園と小学校低学年の子供たちは席の周りで走り回る。

太り気味のお母さんが怒鳴る。

「ちょっと、いい加減にしなさいよ。うるさいでしょ! 」

それでも、お父さんは黙っている。

さきほどから、醤油ラーメンセットには箸もつけず放心状態である。

子供たちは

すこしおとなしくなったかと思ったが

こんどはドーナツが食べたいとゴネ出す。

「もう、きょうはおしまい。いまそんなの食べたら夜食べらんないでしょ」

お母さんは、さっきとは打ってかわって妙な猫なで声で言ってきかせた。

お父さんは何かに操作されるように

無表情なまま上着のポケットからスマホをとり出し画面を見つめた。

二人の子供たちはお父さんに話しかけない。

存在さえしないかのように振舞っている。

はじめまして☆彡

プロフィール見てくれてありがとうございます。

仕事柄なかなか出会いがなくて

Facebookを見ていたらこのサイトをみつけて思いきって

登録してみました。

趣味はカラオケとボーリングです。

お父さんは画面を睨みつけている。

異変に気付いたお母さんは、

「ねぇ、ラーメンのびちゃうよ」と気遣うそぶりを見せながらも

自分が食べたいのを我慢していた。

「ねぇ、パパ、大丈夫? 」お母さんはお父さんの顔をのぞきこみ

二の腕をさすった。

お父さんは、あふれでる涙をこらえながら、

じっとお母さんを見つめて微かに首をふった。

「ねぇ、ちょっと、ホントに大丈夫?」

お母さんはあわてた。

子供たちは二人の様子を悄然として離れたところから見ている。

ボーリングじゃねぇ!ボウリングだ!

ふり絞るようにして、お父さんは叫んだ。

絶句したお母さんは、ややあってから

「・・・パパ、疲れてるんでしょ。もう帰ろう」

と、やさしく声をかけたが。

お父さんは黙って首をかしげたまま虚空を見上げているだけだ。

さっき鮮魚売り場でみかけた鯛の目玉のような目が見ひらかれている。

お母さんには、

その目がどこを見ているのか、さっぱりわからなかった。

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