よく行く近所の銭湯のことである。
ある日の午後 5時ごろ
脱衣所には激烈な猛臭が充満していた。
原因はなにか?
この銭湯は午後 1時に開店するのだが、その時いちばん風呂目当てで来る
年寄りたちは臭くない。
この銭湯に来る年寄りは
1時の班、3時の班、5時の班と大まかなグループに分かれている。
正確な人数は把握していないが、それぞれ5~7人編成であると思う。
1時の班のメンバーたちは、うららかな雰囲気がありお金持ちオーラが出ている。
孫や曾孫の話をよく耳にする。ニオイレベル 0である。
3時の班のメンバーたちは極端で、ヨボヨボなお爺ちゃんと
定年退職してまだ数年の “ 若手たち ” で組織されている。
マナーなどは可もなく不可もなく。
しかし、特定はできないが
やはり加齢臭を感じさせる者が混在しているので注意が必要!
古来より「 朱に交われば赤くなる 」って言うじゃないか。
ニオイレベル 2 要経過観察。
さて、5時のメンバーたちであるが、まず見るからに汚い。いかにも貧乏くさい。
そしてホントに
嗅覚を狼狽させるほどの異臭がある。
独居老人で指摘する人がいないのかもしれない。
とにかく身なりに無頓着で不潔なのだ。ニオイレベル 10以上
もはや測定不可能である――。
わたしがざっと見たかぎり
お互いに違う班との交流はない。
ひとつ例をあげよう、
風呂上がりの 1時の班が 2時 45分ごろ
テレビのあるフロント付近のソファに腰かけて
冷たいものを飲みながら談笑していたとする。
そこへ3時の班の誰かが来店したとしても両者は
会釈もしないし知らん顔なのだ。
これが同じ班の者同士であれば
「 よぉ、コンチハ。きょう遅いんじゃない? 」とかなんとか言っているのだが・・・。
住み分けというのか?
まさか風呂屋から交流の禁止を命じられてるわけではあるまい。
まぁ、どこの世界も似た者同士が一緒になるのだから
自然とこうなってしまったのであろう。
ちなみに 7時の班や 9時の班というものはない。
この時間帯は中年以下の客ばかりで構成されており年寄りはまず見かけない。
時たま 1、3、5のどの班にも属さない
はぐれメタル的な御大が紛れ込んでいたりもするが
なにかやむを得ない事情があったのだろう……じつに稀なケースである。
きょうのわたしは 5時の班と一緒であった。
やはり店内に入っただけで臭い。
自分もいずれこうなるのではないかと思うとゾッとする。
反面教師にしよう。
着るものは毎日洗濯をしたり気を付けて。
「 だからなんで隣にくるんだよぉ! 」
「 いいじゃねーかよ! あいてんだからさ・・・ 」
「 あいてるって、そっちだってあいてんだろうが! 」
「 なんだよ、ここはお前専用の風呂じゃねえんだかんな! 」
浴室に入るとすぐ怒鳴り声が聞こえてきた。
5時の班のメンバー同士である。
どうでもいいような事で揉めだすのは決まって 5時の班なのだ。
同じ班だからといって必ずしも仲が良いわけではない。
特に5時の班にかぎっては寄ると触ると大声を出して怒鳴りまくる。
風呂場なので反響してなおさらうるさい。
怒鳴りあい神経質なくらい身体を洗った 5時の爺たちも
風呂から上がれば脱衣所で服を着る。
しかし、悲しいかな・・・
醤油で煮締めたような衣類を身に着けるので
彼らは風呂上りにも関わらず