おれの知り合いに、派遣社員として事務作業をやっている中年女性がいる。
雇用は不安定で、どこの会社に行っても契約の更新のないまま半年、一年で雇止め、
はやい時では契約の途中の一か月で辞めさせられることもあるという。
「子どもが高校に進学するのにお金が必要」
「わたしの仕事の能力が低いから」
「ほかの人たちは契約更新してるのに・・・」
夫とは三年前に離婚して、中学生の娘と二人暮らし。
なんとなく彼女は、生活するのが面倒臭いのではないかと思われるところがある。
どうも『女は事務をするしか仕事はない』と思い込んでるふしがある。
どこかの会社でダメになれば、また違う会社で事務の仕事をやりはじめる。
あちこちの派遣会社に登録していて、辞めるたびに連絡して・・・
また派遣会社も求人をたくさん抱え込んでいるから、次から次へと紹介してくるそうです。
年齢的にどうかな・・・と、おれは思うのだけど、選り好みをしなければ
結構すぐに採用は決まるそうです。
実際に彼女の働きぶりがわからないからなんとも言えませんが、
採用されても契約の更新がないというのは、どうなのか?
たまたま、その会社とマッチングしなかったのか、求められる能力が足りなかったのか、
その会社の担当者に個人的に嫌われたとか、理由があるはずなのです。
この女性は、雇止めになってもあまりこたえてないというのか、
「まあ、つぎがあるから・・・」と割とお気楽な性格なのです。
そして、実際につぎの仕事はすぐに決まります。
ほかの派遣会社からは、契約中でもジャンジャン募集の案件の連絡が入ります。
でもそれで良いとは思ってないようで、やっぱり世間体というのか
更新もなしに職場を転々としていることに負い目はあるようです。
会ったときの様子から、本当は彼女は事務の仕事が好きではないのかもしれない。
自分の娘にも関心がないようにも見える。
なにか話を聞いていると、がんばってる感がないというのか。
生活感や覇気がない。
好きでもない仕事をしているから、なんだかモヤモヤ感が蓄積して
態度にあらわれてくるんじゃないか思う。
嫌いなら嫌いで違った仕事をさがせばいいものを
「仕事とは、つらく苦しいもの、お給料とは、がまん料」なんていうふうに
自分を戒めているから、長くはつづかない。
やがてくたびれて、嫌な雰囲気が身体からにじみ出てきてしまう。
それが職場の人たちに伝わり、またしても契約はなくなってしまう。
彼女は自分が、何が好きで何が嫌いかわからない。
自分に向いている仕事や楽しみについて考えない。
みんながやっているから、女のわたしにはこれしかない――
そんなことで、なにかを選択してきたのかもしれない。
自分の心の感じ方を見ようとしないから、いつまでたっても
不満な気持ちで、いつづけるのだと思いました。