異物混入の問い合わせ

おれは会社で苦情係ををやらされているが、

今回は、ある商品の中に別の商品が混入していたと言って

電話をかけて来たご婦人の話しである。

「あの、いつもと違うのが何粒か入ってたんです」

「おそれいりますが、どういったものでしょうか?」

「丸くて灰色のやつなんです。A(商品名)は透明なカプセルじゃないですか。

なんか、おかしいなと思って、いちおうお電話さしあげたんです」

「どうもありがとうございます。担当者に確認を取りまして、すぐに折り返し

お電話いたしますので、お客様のお電話番号をお伺いしてもよろしいでしょうか?」



おれは、お客様の番号を控え、いったん電話を切った。

これは、お客に電話代を負担させないためだ。

うちの会社はお客様専用のフリーダイヤルを導入するほどの規模ではないため

こうしているわけだ。そうじゃないと、お客は製品に不具合があるし

いらぬ電話代も払わなければならぬしで「怪しからん!」

と怒り心頭になってしまうのだ。

お客様がおっしゃった異物は、うちの製品だった。

同じ製造ラインなのでなにか拍子に紛れ込んだのだろう。

うちの商品は大手のOEMではなく、社長の懇意にしている

小さな町工場に任せて家内制手工業といった感じで細々と製造しているらしい。

だから働き手も家事をやりながら片手間なんじゃないかというのが、

おれの想像なんだが、

おおかた、うちの会社みたいに作業標準的なマニュアルがなく

なんとなく、見よう見マネで「こういう風にやってね。じゃ、よろしく~」

といった教育方針なのかもしれない。

それだと、やっぱりミスも多くなりがちだ。

おれは、上司に電話の内容を報告した。

「じゃあさ、お客さんにさ、新しいの二つ送ってあげてよ。

それと、不良品は返信用の封筒で送り返してもらってね」

この上司は、日によってもお客の態度によっても対応が違う。

相手がかなり態度の悪い爺さんの場合は、一つしか替えの品を発送しない。

また常連のお得意様だと替えの品を十個くらいと、ほかの試供品を山のように

送るように指示する。

でもまあ、その時の気分次第なのだが。

「お客様たいへんお待たせしました。いま確認したところですね、

A(商品名)を製造している工場がですね、おっしゃられた灰色の丸い粒ですね、それが

弊社のですね、Bという商品なんですが、それもとなりの工程で製造しておりまして、

ええ――そうなんですよ、混ざってしまったんです。申し訳ございません――ええ、

もちろんですね、お召し上がりになられても、まったく問題はございませんので、

ええ――それでですね、替わりの新しいAをお送りいたしますので……」

このようにして、この件は一件落着したのでした。

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