会社に行くのはやめよう

いままで休んだり遅刻早退もなく、毎日出社してたのに、

突然バックレてしまうような人は真面目に仕事をやりすぎていたりする。

ある日の朝、目覚めると何もかも嫌になっている自分を発見する。

どうしても会社には行きたくない。

このまま寝てしまおうか……

とりあえずシャワーを浴びて身支度を済ませる。

いつも通りの時間に家を出て、いつものコンビニに寄る。

イートインスペースのいつもの席に着いて

いつものコロッケパンをかじる・・・



いつもの駅に着いたが、一度も乗ったことのない電車に乗り

会社とは反対方向に向かった。

終点の駅からは確か海が見えるはずだ。

おれは頑張りすぎたのか?

自分では無自覚だが、いつも仕事のことを考えていた。

朝起きた時から、退社しても土日祝日も、学生時代の友人たちとの飲み会も

誰がどこに勤めていて、

どんなポジションに就いているか――そんなことばかり気にしていたようにも思う・・・

おれに恋人はいなかった。

いた時期もあったが、会っている時はなんだか時間の無駄に思えた。

その時間と労力・・・『労力』と表現してしまうあたりに

交際の程度がうかがえるじゃないか。

実際に相手にもそれが伝わるのか、徐々に疎遠になって音信不通となった。

おれは車内でそんなことを思い返していた。

いつものスーツを着てるが、都会とは逆方向に疾走する列車に乗って・・・

スピードを増した車両には乗客が少なかった。

都会に向かう満員電車とは別世界である。

いまごろあの電車は・・・

同じ時間にも関わらず違った空間がそこにあった。

腕時計をのぞくと7:50だった。

8:30から始業なので、10分前になったら会社に電話するとしよう。

おれはネクタイを緩めて、一番端のシートで手すりにもたれ、うとうとする。

小学生の夏休み、朝もやのなかで友達とプールに行こうと待ち合わせてる。

一人二人と集まり、もう一人来るはずだったがなかなか来ない。

「あいつはいいよ。もう行こう」おれは、みんなにそう言って

プールへ向かおうとしたが、みんなは待つと言ってその場に残った。

おれは、ひとりで鬱蒼とした森に分け入り、断崖絶壁に突き当たる・・・

そこにはギアナ高地の上に立ったような絶景が繰り広げられたが、

徐々に足元がヌルヌルしだすと踏ん張りがきかず、ふわっと身体が浮いて――

目を覚まして腕時計をのぞくと7:56・・・

列車は猛烈なモーター音を唸らせて都会から反対方向に、もはや爆走している。

おれとは偶然に乗り合わせたはずの乗客たちは

全員催眠術にかけられたように目を閉じていた。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする