孤高の成人式

三日ぶりにシャワーを浴びてハローワークへ行ったのに

本日の業務は終了しました

という看板が出ている。

なんで、どうして、、

まっ昼間なのに・・・? 

スマホを取り出しカレンダーで確認する。

十四日の月曜日・・・やっぱり間違いない、どういうことだ?

しばし入口の前で呆然としていると

振袖姿の女性たちがガラスドアに映った。

今日は成人の日ということで日本全国が祝日とのこと。

その祝日の成人の日には

お祝い事の成人式というものが付きものと思われますが

じつはこれ、自治体によって開催日が違うらしいね。

ぼくは新聞も取ってなければテレビも観ない、

そのうえ仕事もしてないので世事に疎くなってしまったようです。

ちぇっ、休みじゃしょうがねぇな。と、

街から少し外れたハローワークを後にして

冬の陽光を浴びながら買いもの客でごった返す駅周辺にやってくる。

この近くには成人式の会場となった大きなホールがあり

そのエントランス前はベンチなどのある広場になっている。

いつもは小さい子供を連れた若い夫婦やヒマをもて余した老人が二三いるだけなのに、

きょうは晴れ着姿の新成人たちが、

それぞれ三人組、四人組、五人組、六人組・・・と何十組もひしめき合っていた。

あちこちから大袈裟なくらいの笑い声が聞こえてくる。

二人、三人と寄り添ってはポーズをきめて何枚も何枚も写真を撮ったり。

素っ頓狂な声をあげながら肩を叩きあったり。

一升瓶から日本酒をラッパ飲みして気炎をあげるハカマ姿の軍団もいたり。

みんな異様とも思えるムードで旧交を温めていたのだ。

なんか羨ましかったなぁ。

ああそれと、

みんな見た目も大人なんだなと感じた。

ハタチってなんだかもっと子供っぽいかなと思ってたんだけど

そうでもなかったよ。

衣装や化粧のせいもあるんだろうけど、

なかには行きすぎて貫禄さえ漂う部長さん風の新成人や

老舗旅館の女将みたいな新成人もいたけどね。

太っているとかなり年上に見られやすいのかもしれない。

かなり前のことだけど、ぼくは成人式に出席しなかった。

行かないって決意して行かなかったわけじゃなくて

ぜんぜん気にしてなかったんですね。

いつも通りパチンコ屋で仕事してたら常連のお客さんに

「 あれっ、お兄さん! あんた成人式行かないの? 」

「 えっ、きょう成人の日でしたっけ……? あははは 」といった具合で

すっかり忘れてたのでした。

仲間と話し込むこともなく

西日の降りそそぐ歩行者天国を繁華街とは逆方向に歩く振袖の女性がひとり。

ああ綺麗だなぁって、すれ違いざま思わず見とれてしまったけど

その顔つきは険しく憮然たるものがあった・・・。

きょうは意外なくらい、こういう女性たちを何人も見かけた。

男性でもいるんだろうけど和装より

スーツ姿が多いので、たぶん目立たないだけなんだと思う。

振袖を着て一人でトボトボ歩いてるのって淋しげですね。

しかもすごく目立ってる。

着物なんて着なれてないから

シャナリシャナリと歩けないんじゃないかな?

いつもはジーンズを履いて街を颯爽と闊歩している女性も

きょうばかりは小股でトボトボ歩くしかない。

大学に通うため上京した人の場合。

成人式に行ったはいいけど知り合いはいないので

とにかく早く自宅のワンルームマンションへ帰ろうというのだろうか――。

地元出身者でも小中学校時代の同級生と再会したけど、なんとなく

気まずくなって、話に参加できず、なんとなく・・・。

この後の同窓会はやっぱり欠席して

そろそろ、帰ろう。

会場では知ってる顔を何人も見かけたはずなのに

式が終わった後……誰からも声をかけられなかった!

ふぅわぁ、帰ろう。

今年はダメだったけど来年こそは

ってわけにいかないじゃないか成人式はさぁ!

どうしたいのかわからないまま心密かに意気込んで

誰もいなくなった式の後――帰ろう。

とても華やかな恰好なのに、しかめっ面でトボトボ。

そのままレンタル衣装店に返却に行って

そして店でいつもの自分の服に着替えたら

なにくわぬ顔して、そのままコンビニかなんかのバイトに行くのだろうか?

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