臭い男の心の闇

もうそろそろ四月ということもあって

日中は暖かい日が続いたりするのだが、暖かいと汗をかいたりするので

中には不潔な御仁もいたりして、異臭を放っていたりする場合もある。

会社に出入りしている宅配業者なのだが、ユニフォームを洗濯していないのか

とても臭いおじさんがいる。

エレベーターなどで一緒になると、息もできないくらいのありさまなので、

なんとかしてほしいものなのだ。



以前、うちの課長に相談というか、それとなくおじさんの

話しをしてみると、やっぱり状態を知っていた。

「本人に直接注意するのもね……営業所に電話して責任者に話すか」

それから、しばらくは悪臭はしなかったのだが、また最近は臭くなっている。

しかも酒臭さがプラスされているのだ。

酒飲んで配達しているわけではなかろうが、前夜に深酒して

二日酔いのまま仕事に来ているといった感じだった。

これについても、社内の各部署から指摘があり、

総務部の課長は営業所に、問題の配達員を出入りさせないよう要請した。

その配達員は見たところ50代だと思うが、年齢不詳な雰囲気がある。

日焼けした顔は健康的ではなく年老いた亀のようでもあった。

不摂生がたたって老けて見えるだけで、まだ40代なのかもしれない。

うちの会社だけかもしれないが出入り業者は不潔な人が多いので、

身綺麗にしているだけで、とても印象はよくなる。

印象をよくしてどうするのか・・・といわれればそれまでだが、

不潔で疎まれ苦情の電話を入れられるよりいいだろう。

おれはどこまで走れば、たどりつけるのだろう。

おれはどこまで飲めば、満ち足りるのだろう。

あの日の夕暮れ、コンビニで買った焼酎のペットボトルはもう空っぽだ。

相棒の燃料も満タンにしたって三日と持たない。

タイヤをすり減らし、靴底をすり減らし、

おれは、きょうも移動を繰り返す。

おれのアパートにはベランダがない。

だから洗濯物は部屋に干すのがデフォルトなのさ。

梅雨の時期はコインランドリー。

おれは、一人暮らし、天涯孤独。

一度も結婚したことはない。

子供だっていないはずだが――

なにしろ、おれは素人童貞だからな、くくく。

所長は「これで銭湯に入ってコインランドリーで洗濯してこい」と言って

千円札をくれたけど、おれは、いま気力というものがない。

風呂に入るのも億劫なんだ。

なんなんだろう、これは、もしや、うつ病かもわからない。

職場の連中に「どうした? 元気出せって」なんて言われて肩を叩かれても

ちっともうれしくない。

いつからか、こんな状態がつづいているのだ。

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