七度探して人を疑え

会社までの道すがら、女はガムを道端に吐き捨てたのだが

数分後に今度はガムを踏んづけたのだった。

「うそぉ、因果応報ってあるかも・・・」

あわてて道路の縁石に靴底をこすりつけてガムを取ろうとすると、

植え込みの中に光る500円玉が落ちているのが見えた。

「なんだか、きょうはついてるかも」

女はそれを手に取りニンマリする。

「これでお昼ご飯を買おう」

行きがけのコンビニで弁当を買うことにした。

会社に着いてから休憩室の冷蔵庫にそれを入れておいたのだが、

昼休みになって冷蔵庫を開けると弁当がない。

「あれ? わたしのお弁当が・・・誰か間違えて持って行ったのかも」



自販機でお茶を買ってから休憩室を見回した。

太ったおばさんが、コンビニ弁当を食べていたので

少し近づいてみると、自分が買ったのと同じ弁当だった。

「お弁当おいしそうですね」

おばさんはチラッと女の方を向いたが、黙っている。

どことなく警戒心がみなぎっているように感じた。

「コンビニ弁当って、ホントいいですよね」

なにが良いのかは女もよくわからなかったが、

そんなセリフを言ってみたくなったのだ。

すると、おばさんは

「コンビニ弁当なんて、たいしておいしくはないわよ。

いつもは買わないんだけど、きょうは朝バタバタしちゃって、仕方なく」

自分で買ったんじゃないから、そんなことが言えるんだろう!

女は自分の持ち物にケチをつけられたようで腹立たしかった。

ただ、おばさんが弁当を盗んだという証拠は、どこにもない……

それに、本当に自分で買ってきた弁当かもしれない。

真犯人が他にいる可能性は否定できなかった。

「そのお弁当どこで買ったんですか?」

おばさんは、箸を置いてペットボトルのお茶を一口飲むと

「すぐそこのセブンイレブンですよ」と、こともなげに言ってのけた。

女は忌々しさが込み上げてきた。

「わたしも同じお弁当をきょう買ってきて、

そこの冷蔵庫に入れておいたんですよ」

すると、おばさんの顔色はみるみる変わっていった。

「それって・・・いったい、どういう意味なんでしょうか」

おばさんは怒ったわけではなかったが、

言いがかりとも取れる女の言動に憮然とした表情をしていた。

「いえ、べつに・・・わたしも同じお弁当を

今朝買ったというだけの話ですから」

おばさんは、まだ食べている途中であったが、

そそくさとテーブルの上をかたずけると、

無言で立ち上がりどこかへ行ってしまった。

女は近くのコンビニで改めて弁当を買おうと考えた。

飲みかけのペットボトルのお茶を冷蔵庫にしまうため

扉を開くとレジ袋に入った弁当がそこにあるじゃないか。

『――おかしい、さっきはなかったはずだけど』

レシートが袋に入っていたので確認すると、

女が買ったセブンイレブンの店名と時刻が印字されてあったのだ。

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