老化は関係ない年寄りがキレる理由

散歩の道すがらファミリーマートで肉まん二個と温かいウーロン茶を買って

店の裏手にある児童公園のベンチで休憩としゃれこんだ。

ふだんは滅多にコンビニなどには立ち寄らないのだけど

きょうは吸いこまれるように店内に入ってしまった。

お腹がすいていたからだろうか。

「あれ、肉まん売ってた? 俺がさっき行ったときは売り切れだっていうからさ

こういう時期は飛ぶように売れるんだから、

ちゃんと準備しとけって言ってやったんだよ。そしたらさ・・・」

とかなんとか言いながら

見知らぬ爺さんが近づいてきて隣に腰をかけてしゃべりまくる。

「・・・まあ、あいつらバイトだからなぁ」

「そうでしたか。でも、そんなに怒ることでもないんじゃ・・・」

「いやぁ、俺はね、もう我慢する必要はないと思うんだよ」

そう話すのはヤオさん(70歳)と名乗る男性でした。

八尾なのか矢尾なのか谷尾なのかは不明。

近所に奥さんと二人で住んでるらしく

仕事は15歳から金型職人として鋳物工場に50年勤めてたそうで

いまは年金をもらって、どうしたこうした・・・。

ヤオさんが「ニーサンは若いから、まだ辛抱することが多いかもしんねーな」

などと話している間も

ぼくは、

もしかしたら矢追かもな、ヤオイ、801、なんて別の思考回路がはたらいてました。

「そりゃあ、俺だってね、勤めに出てる時分にはずいぶん我慢したけどね。

大先輩のオヤッさんには絶対服従だから」

「その大先輩のオヤっさんは怖かったんですか?」

「怖いなんてもんじゃねーよ。急にさ。こうだよ。なにやってんだー! って怒鳴るんだよ。はっはっは」

大声を出してヤオさんは嬉しそうだった。

ぼくは、肉まんを一人で食べて、温かいウーロン茶も一人で飲みながら

西に傾いた冬の陽がまぶしいので目を細めてしまう。

「まあでもね、もう死んじゃったけどさ・・・」

「そうでしたか。そのオヤっさんに対してヤオさんは憧れの気持ちがあったんですか?」

「憧れ?そんなもんないよ・・・」

オヤだかヤオだか、どうでもいい話だよまったく。

さっきから話が終わらないけど、よっぽど暇なんだろな。

「昔はそれが当たり前だったんだよな」

「そういえば、ずいぶんまえにテレビで観たんですけど

年を取ると脳の前頭葉も老化して感情のコントロールが難しくなるらしいですね」

「それね、俺も医者だとか友達にも言われたけどね、老化じゃなくってさ。

もう我慢する必要がないからじゃねーかな。

だってさ、会社だと、やたら泣いたり怒ったりってできないけど

もう自由なんだから、好きに振舞ったっていいわけだろ。だからだよ」

ヤオさんは声のボリュームを落とすと自説を長々と披瀝しだした。

どうやら老化説を認めないらしい。

「そりゃ俺だってまだボケちゃいねーつもりだし。まだまだ我慢もできるよ。

でもよ、我慢してどーすんの?」

ヤオさんの話もわからなくはなかった。

70歳といってもヤオさんは身体もデカいし元気だし

話した感じではボケてもいないようだから、すぐには死なないと思う。

こんな人が「我慢してどうする関係ねーだろ」と居直って言いたい放題じゃ

まわりは迷惑千万だろう。

ファミリーマートで肉まんが売り切れてたくらいで

ガミガミ言ってるようじゃ、このさき何しでかすかわからないもんですね。

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