「 わたしは、会計事務所で契約社員として働いてるんだけど
大きな会社と違って、担当とか決まってないんですよ 」
流れが変わってきた。
星の数ほどのイルミネーションに彩られた街
パリピたちも賑やかそうだが
待ちあわせ前の期待感とは裏腹に
案外ひっそりと、おしとやかだ。
青と白、LEDのきらめきが目を突き刺すなか彼女と出会った。
ミーたんとは、もう3年ほどになるのか、
とあるコミュニティサイトの住人同士。
だが、リアルで会うのは今日が初めてである。
パッと見、
ネット上で公開されているプロフィール画像とは
かなりかけ離れているが・・・
うむぅやっぱり、いい女といえる部類に属しているなと
おれは再判定を下さざるを得なかった。
いきなり居酒屋ではなく
まずは、いま流行のありきたりなカフェに入る。
お互い改めて自己紹介というか簡単に本名なんかを名乗ったりして。
なんと、ミーたんの本名は三橋三千子だったのだ・・・!
三橋だからミーたん? それとも、三千子だからミーたん?
ええい! どっちでもいいじゃないか、そんなこと。
ふふ・・・じつに安直で、なんか親しみもわいたわい。
おれ「 あぁ、そうなの、三橋三千子?! なんか珍しいよね 」
ミーたん「 あたし、あんまり自分の名前好きじゃないんですよ 」
おれ「 そお? なんかこうインパクトあるよねミッチーって感じでさ 」
ミーたん「 ミッチーってやだ……。中学んときバカにされたもん 」
おれ「 えっ、なんで?」
ミーたん「 三橋美智也っているじゃん 」
おれ「・・・うん・・・」
~~~~~~~~~~~~中略~~~~~~~~~~~~~
「 基本なんでもやってるんですが、
ひとりでやるには業務量が多すぎると感じてて 」
うんうん、まあ、それはそうだろうね。
「 それで、最近は疲れてきました。
どうしても時間までに作業が終わらないんです。
急いでやるので確認がおろそかになってミスも増えました。
そんな時は嫌味を言われたり軽く怒鳴られたりもします。
自宅に帰ってからも仕事の緊張がとけないのか動悸が激しくて、
ときどき目まいもします 」
矢継ぎ早だった。
「 もう一人か二人くらい新しくパートさんでも募集したほうが
いいと思うのですが、所長は聞く耳をもちません 」
という、流れになったんですよ。
なんか、よくありがちな話の内容ですね。
でも、どうして愚痴というか身の上相談みたいになったんだろう。
おれはもっとムフフな関係になりたくて期待してたのに、
そういう方向にはまったく行きませんでした。
もう退職するべき時期じゃないでしょうか?
その前に、体調不良を理由に有給休暇を申請してみたら。
そのまま勤務を続けてたら、うつ病になっちゃうよ。
ミーたん曰く、
有休は取れないし、ましてや辞めるつもりはない。
ミーたんは公認会計士の資格を取るつもりで
勉強を続けてるらしい。
その会計事務所に世話になってるし、
将来同じ業界でやっていくなら変な辞め方はできないっていうんだけど。
どうなの?
だって、体調に異常をきたしてるんだから、
もう仕事とか勉強どころじゃないでしょうに。
公認会計士ってググってみると司法試験の次に難しいって言うけど。
あれからしばらくたつが彼女から連絡はない。