拾得物によっては警察を呼ぶことも

「ねえ、これ何かしらね」

そう言いながら、初老の女性清掃員のふたりが、黒いカプセル状のものを

守衛室に持ち込んできた。

おれはこの工場で守衛をやっているのだが、従業員や来客者たちの落とし物や忘れ物の

管理も任されているのだ。

「うーん、なんだろうな? これ」

大きさは1リットルのペットボトルといったところか

アルミだかステンレスだかの金属でできているようで

表面の処理はヘアライン加工が施されている。色は黒。

高級なオーディオ機器にあるような仕上げだった。

形状はガスボンベに似ていたが、気体を出し入れするバルブがどこにも見当たらない。

清掃のおばちゃんから手渡されると見かけよりも軽い。1kgぐらいか・・・

ドアをノックする要領で叩いてみると、どうやらなかは空洞らしい。

「これ、どこで見つけたんですか?」

おばちゃんたちに聞くと、

「正門のとこに置いてあったのよ」

もしかすると、爆発物かもしれないと直感的に頭をよぎった。

タイマーか遠隔操作で爆発がおこらないともいえない。

すぐに警察に通報しようかとも思ったが、まずは工場の責任者に連絡をしてみる。

爆発物でなかった場合、なんで勝手に警察を呼んだのかと責められかねない。

「じゃ、うちらは仕事があるから――」

おばちゃんたちふたりは、談笑しながら工場内のどこかへ行ってしまった。

「なんだろう、酸素ボンベかな・・・色も黒いし」

責任者の話によると酸素ボンベは高圧ガス保安法により外観を黒色にしなければ

ならないようだ。

ちなみに二酸化炭素は緑色とのこと、そういえば居酒屋のビールサーバーの横に置いてある

炭酸ガスのボンベは緑色してたっけ。

「ボンベにしてはバルブもないし、どうも様子が違うみたいですが」

おれは横から口をはさんだ。

「そうだね、なんだろうなあ・・・」

工場の責任者は、しばらくのあいだ手に持った黒い塊を角度を変えて子細に眺めていたが、

やがて「爆発物の可能性もあるから、警察を呼びましょう」ということになった。

責任者は守衛室のうす汚れた電話で、110番ではなく最寄りの警察署に電話をした。

責任者は終始のんびりした口調で黒い物体の形状や置いてあった場所などを

電話口で説明していた。

電話を切ってから5分とたたないうちに、パトカーが2台と自転車に乗った警官がやってきた。

「いちばん最初に見つけたのはどなたですか?」

制服を着た警官にまじって、ジャンパーにジーンズというラフなかっこうの

男がわれわれを見まわした。おそらく刑事だろう。

顔がひどかった、顔の皮膚をぜんぶ切りきざまれ

またふたたびジグソーパズルのように繋ぎあわせたような

いびつな造作をしている。

おれは「清掃員です。呼んできましょうか?」とこたえると、

刑事は「そうですね、ぜひ・・・」と、いびつな顔をニヤリとさせた。

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