神経を逆なでする苦情処理係

おれが休憩から戻ると、

松木孝美(43歳)パート社員が電話に出ていた。

「はあ……はあ……それは聞いたことないです。

いえ、そんなつもりはないんですけど」

なにやら、やっかいな雰囲気が感じられた。

松木さんにメモを見せて、おれに電話を替わるように伝えた。

「ちょっと、お待ちください、電話を替わりますので」

そんな言い草で電話を替わられたら、おれが困るのだが……

「もしもし、お電話を替わりました。お客様相談室の――」

実際、お客様相談室など、うちの会社には正式に存在しないのだが、

おれは名乗ってから、相手の話を訊いた。

「あのお、知らないとか、聞いたことないって、言うんだけど

そんな人を会社の代表電話に出させるのはどうなんですかね?」

よく注意して教育しておくということで、了承していただいた。

しわがれた声の感じから

かなりお年を召した、お爺ちゃんといった印象を受けたのだが、

松木さんは以前も年配のお客さんを、ないがしろにする態度を取っていた。



近年、お年寄りがキレたりするのも、

対応が悪かったりするケースもあるのではないかと思われる。

年寄りじゃなくても相手を軽く見てぞんざいな扱いをすれば、

誰だって怒りたくもなる。

ましてや苦情を入れてる時にそれをやられたら

キレたくもなるだろう。

そこに年齢は関係ない。

以前、松木さんは、「商品が変色していた」という問い合わせに対して

「そんなことを指摘されたのは初めてです」と言ってしまったことがあった。

お客としては「じゃあ、わたしがでっち上げてるとでも言うのか」と

憤慨したくもなるだろう。

初めてとか、初めてじゃないなんて、関係ないんだから

お客さんとしては

なんで問い合わせの電話で、そんなことを言われなきゃならないのか

理解できないだろう。

あと松木さんは、お客が激怒の電話をかけてきた時に

ノラリクラリと別な作業をしながら上の空で話を聞いていたらしく、

「――ということなんだから、なんとかしてほしい」とお客が締めの言葉を言った時

「えーと、そうですか、要するに……

すみませんがもう一回、お話を聞かせてもらえますか?」

と言って、さらに相手を激怒させた。という事例もある。

これなんか、当然ですね。

相手は怒りをぶちまけて、ある意味でスッキリしたところなのに、

もう一度怒ってください、と言ってるようなもんなんだから。

ちなみに松木さんはめげないです。

お客さんに怒られたうえに、上司に怒られても

まったく動じない。

ザ・オバサンといったテイストを醸し出していて

とにかく図太いのだ。

きっと、うつ病とかには絶対ならないタイプですよ。

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