疎遠な人からの連絡

「下川さん、お久しぶりです。最近、調子はどうですか?」

先日、突然、連絡がきました。

まあ、メールに前ぶれもなにもないのかもしれませんが、

それは、とても意外な人物からでした。

ふだん思い出しもしないような人物です。

とにかく、

そんな感じのメールが、かつての同僚から届いたのです。

『……また、金を貸してくれってか?』

近頃は意外な人物からの久方ぶりの連絡を警戒するようになってます。

だいたいにおいて、

よくよく、話を訊いてみると、

借金の申し込みだったり、ネットワークビジネスの勧誘だったり・・・

どちらも自分は関わりあいたくない。



ずいぶん昔の話ですが、何かの本で、

『金を借りに来た奴には、金を貸してやれ。返す当てがなければ、

二度と現れないから』という話があって、

実際に一万円ほど貸したという失敗がありました。

でもそいつは、返す当てもないのに再び金を借りに来るというありさまで

断るのに四苦八苦したのです。

身なりからは、

いかにも荒んだ雰囲気が横溢してて、話をするのも嫌だった。

なんとかお引き取り願ったのだけど、ずいぶんと酷い捨て台詞を吐いて

帰っていったのをおぼえている。

盗人猛々しいというけど、ほんと嫌な後味だけが残った。

それに、結局は最初に貸した一万円も返って来なかったし。

ネットワークビジネスの勧誘がらみでは

学生時代の友人に待ち伏せされたこと。

会社からの帰り、駅までの道すがら、

「あれ? 下川じゃない?」

約十年ぶりの偶然の再会だったけど、いま考えると

何であの時、会社のトイレで用を足したのかと悔やまれる――

というのも、いつもは退勤してからすぐに社屋を出るのだが

その日にかぎって、トイレを使ったのだ。

一足違えば、あんな奴とは顔を合わすこともなく

思い出すこともなく、いまも平和に過ごせたのに。

こいつとは

それからというもの、同じ時間帯になると偶然に道中で遭遇する機会が

増えたのだが、だんだんと意図的なものを感じるようになった。

あきらかに、こちらの帰りを予測して待ち伏せているといった具合なのだ。

「おつかれさまです。どう? ちょっとその辺で一杯」

居酒屋に誘われたが、断って近くのコンビニのイートインスペースで

話すことにした。

まあ、とどのつまりは、「あなたの人生それでいいの?」といった感じで

不安をあおって入会を勧めてくる方法だったので、席を立って帰った。

その後も帰り道で出くわしたりしたが、話を聞くことも断り続けたら

そのうち現れなくなった。

ぼくの場合は運がいいのでしょうね。

割と断ればすぐに退散してくれる連中ばかりなので

助かってます。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする