「友達なんて一人もいらないでしょう」と豪語した。
同僚の田中君(34歳)は友達がいないそうだ。学生時代からずっといなかったようです。
彼によると必要性を感じないとのことです。
ぼくは田中君とよく話す間柄だったため、彼のその言葉にうっすらと寂しい思いをしました。
ぼくも友達はいないのですが、「必要がない」とまで断じるほどではないのです。
できれば、友達がほしいといった希望はあるのですが、
ただ、がんばってまで作ろうとは思っていません。
田中君とは飲み会で隣の席になったので、彼の友達不要論について訊いてみました。
ちなみに田中君は会社の飲み会やイベントなどには率先して参加する
珍しいタイプです。飲み会は仕事の一部だと割り切っているとのことでした。
近年では会社の飲み会に参加しない若者が多いと聞きますが、
うちの会社でもそういう人はたくさんいて、お盆前後と年末に行われる
会社公式の飲み会(参加費は会社負担)にも出席しないのです。
年一での社員旅行などもっての他です!
田中君に言わせると、そういう人たちは損をしているとのこと。
ふだん風変わりな印象を上役たちに与えていても
ちゃんと会社のイベントに参加してれば、
なにかヘマをしても多少のお目こぼしをいただけるという話でした。
これにはぼくも賛成で確かに思い当たる節もありました。
「いやあ、キミがシューベルトが好きとはねえ・・・」と飲み会の次の日に
ふだんは挨拶くらいで話なんてまったくしない専務が向こうから
感心した笑顔で話しかけて来たり――
ちなみに、ぼくはシューベルトはもとよりクラシック音楽なんて興味はないので
専務は誰かほかの人の話とゴッチャになって勘違いしているのだと思います。
でも良い方向に誤解してもらったので助かったけど、
悪い方向に記憶されたら厄介ですね。酒が入ると怖いんですよ。
でも専務ともあろう人がそれでは困るじゃないか・・・もしかして、ぼくを試しているのか。
まさか・・・なんのために。
将来を嘱望されるエリート候補とか?
それほどぼくは優秀ではない。普通でもなく中の下といったところかな。
田中君は優秀なんだろうな。そんな風格が漂っている。
友達はいらないと言う割に、コミュ障というわけでもなくて
愛想は良いほうじゃないかと思う。社交的というのか。
それもすべて計算でやってるとしたら怖いけど、どうだろう・・・。
取り立てて、わざとらしい点はないから彼の生まれ持っての素質なのかもしれない。
友達はいらないけど、人と関われないわけじゃない。
むしろ積極的に関わるべき時は関わって、楽しく時を過ごしているように見えた。