トナラーからの離脱

電車やバスでガラガラなのに隣に座ってくるヤツや

空いてる広大な駐車場で隣に駐車してくるヤツをトナラーというようだが、

こういう輩は、銭湯にも出没する。

トナラーの傾向は男女問わず年配の人に多いようだ。

昼下がりの銭湯には年配の客が多い・・・

つまり必然的にトナラーは多くなってしまうのだ。

さなきだに風呂場というところは全裸であることが基本なので

そのストレスたるや電車やバスの比ではない。

おれの場合は恐怖ですらある。



トナラーが出現した場合、おれは頭をシャンプーで泡まみれにして洗っている最中でも

洗い場を移動する。

残された爺さんは「おれが何か悪いことしたか?」とキョトンとした顔をしている。

それから数秒後、やっと血が廻ったのか

「ケッ、なんだよ邪魔者あつかいしやがってよ!」といった険しい表情に変わるのが

不憫である・・・

ほかに場所はいくらでもあるのに、わざわざ隣に来る神経がわからん。

その場所が気に入ってたとしても、あまりに偏執狂的すぎる。

まったく気持ちの悪いジジイだな・・・あははは

隣に座っていきなり話を始めるジジイもいる。

「きょうは孫とね――」

『誰だ? あんた・・・』顏を見知りでもなんでもないのに話しが止まらない。

「――で、娘に言ったんですよ――」

ほとんど独り言に近い。

おれは相槌も打たないで、無言のまま洗い場を移動する。

残されたジジイは口をあんぐりと開けおれを見つめていた。

おれは目をそらし湯舟に浸かり目を閉じた・・・

『ああ、いい湯だなあ』

「でね、息子の嫁がね――」

目を開けるとさっきのジジイが湯舟に浸かって、おれの隣にピッタリとついてるじゃないか。

ロックオンされちまったわい。

さみしいというか、自分ひとりで楽しめない人たちなのかな。

常に誰かとつるんで楽しませてもらわないと、不安な人たち。

相手がひとりでいたいとかの意向は無視して自分が話したいから話す、

くっつきたいからくっつく、自分本位な人たち。

おれは風呂に浸かりながら、ゆったりと人生について考える……というのが

好きなのだが、トナラージジイはそんなことにお構いなく

べたべたくっついてきて気色悪い。本当に邪魔なのだ。

だから、きょうはついてなかったと思って、

いつもより早く風呂屋をあとにした。

おれには時間がたくさんあるので、その足で書店に行く。

ビジネス書コーナーで、ある一冊を手にすると、つかつかと歩み寄ってきた

見知らぬ爺さんが

おれが手にした本を横から繁々と眺めて感心したようにうなづいている。

また何やら長話が始まるかと思い本は買わずに、早々に書店をあとにした。

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