わだかまりもプロに聞いてもらう

石崎美奈絵さん(24歳)は埼玉を中心に展開する美容室チェーンで働いています。

住まいは会社が寮として借り上げている2Kの木造アパートの一室。

ここに同僚の沙友里さん(26歳)と二人で暮らしています。

この沙友里さんというのが

とにかくモテるそうで、同じ店の男の子はもちろんのこと

お客さんからも誘いが絶えないとのことです。

美奈絵さんは微妙でした。

というのも、沙友里さんのことが好きだったからです。

ある休みの日

ベッドに横になっている沙友里さんの隣に腰をおろし

ささやくように告白しました。

でも、昨晩は男の子たちと遅くまで飲んでたらしい沙友里さんは

なにも言わずに

ぼんやりと白い天井を見つめたままだったそうです。

やがて、冬将軍がおとずれて歳末商戦で活気づく街。

なぜか恋人同士が目立つような気もしなくはない。

なんだか自分には価値がないように感じられて。

沙友里さんは仕事もできるし人気もある。

でも、わたしはいったい何ができるんだろう・・・

ある休みの日の午前中

一緒に服を買いに行こうと沙友里さんを誘ってみたけど

いつも通り、パジャマのままベッドに寝転んでいるだけで

外に出たくないということだった。

そこからは店で見せる快活な姿はみじんもイメージすることはできない。

ひとりで街に出てショッピングモールの中を散策していると

『占いの館』というテナントが目に入った。

いささか神秘的すぎる入口の装飾や店の奥に見える調度類だったが

かえって『占いとはそうでなくてはならないのだ』という

一定の安心感と納得感を利用者に与える効果があるようだった。

看板には占い師たち5人の名前と顔写真がある。

姓名判断、手相、タロット、四柱推命、水晶霊感

各人各様の数奇な運命の導きともいえるプロフィールが紹介されており

ますます信憑性と付加価値を高めているのだ。

美奈絵さんは占いなど普段は興味ないのだが今日はどういうわけか

店の前で足を止めてしまったのだ。

ただの印刷物のはずだが……

水晶玉に両手をかざしジッと球の中心部分を見つめる瞳は

やさしいとも厳しいとも冷たいともつかないものだった。

どことなく沙友里さんがベッドで仰向けになっているときにみせる

虚ろな眼差しとオーバーラップしていく――。

美奈絵さんは店内に入っていった。

結婚後も浦和市内で働いている姉のこと。

アパレル関連のオフィスに勤めていて、来年結婚するという友人のこと。

小学校の時に好きだった男の子のこと。

みんな、なんで、どうやって仲良くなっていくんだろう・・・。



椅子に掛けるようすすめられ、

受付の女性に「しばらくお待ちください」といわれてから、わずか1分ほどの間。

想念はつぎつぎと浮かんでは消えていった。

さっきの女性が再びやってきて

「お待たせしましたご案内いたします」



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