わらしべ長者

何かを得るには何かを失わなければならない。

これは、断捨離本やビジネス書だとか自己啓発書に

よく書かれていることです。

わらしべ長者の主人公が、お釈迦様かなんかに

「 最初に手に触れたものを大事にしなさい 」と言われた

けど、それを迷いなく手放して物々交換のあげく最後は屋敷を

手に入れるという話だったかな。

ぼくは子供のときから物々交換で得したことないなぁ。

一回の交換で終わらしちゃうから良くなかったんですかね?

交換したものを元手にして交換を繰り返すと、

だんだんよくなる法華の太鼓だったのかもしれない。

そういえば先日こういうことがありました。

ともだちF君の引っ越しの手伝いをしたときのことなんだけど、

お礼ということで、映画かなにかの

DVDを何百枚ともらったんですね。

DVDはケースがなくて、

白い盤面にテプラや手書きのタイトルがあって

ダビングしたやつかなって。

たぶん中古屋が買い取らないからくれたんでしょうね。

二ヵ月ほどたったころ、自宅にひとりの制服の警察官が訪ねてきて、

「 Fさんの知り合いですか? 」と、訊いてきた。

そうですが、と、答えると、

「 FさんからDVDを預かってませんか? 」 と、言う。

もしかして、これのことですかね?

と、ダンボール箱に無造作に入れられたDVDを見せると、

「 お時間は取らせません。これは、わたしがお持ちますので、

これから M 警察署まで、ご同行ねがえませんか? 」と、きた。

なぜか、とっさの言い訳で、

あ、あのぉ、いまから大事な用があるので

“ きょうは行けません ” と

言ってから、ヤベェ! と、思ったんですよ。

「・・・そうですか、きょうが無理とすると 」

まずいぁ。でも、なんだろう変な事件に

巻き込まれそうな感じだし。

「 ご都合のよい日とか? 」

そうですね、、

あ、やっぱり、いいですよ、いまから行きます。って。

なんかさ、後日出頭するのも面倒だし、

アポなしのセールスと違って

一言ことわれば済むって問題でもないだろうからさ。

それに、だいたい自分は何も悪いことしてないしね。

でも、違法な薬物とかだと所持しているだけで罪になるかーー。

ああ、なんなんだよ~あのDVD。

「・・・ご予定のほうは、よろしいんですか? 」

なんとなく、制帽の下の顔に含み笑いがあったようだけど、

なんやかんやと、うやむやにして・・・

いったん、ぼくが行くと決めると、

警察官は携帯している無線で、柳沢慎吾みたいに交信してた。

「 では、表の通りで待ってますから 」と、わざとらしい敬礼をして、

DVDの入ったダンボール箱を持って行っちゃったんです。

すぐに身支度をして外にでると、

おもちゃのミニカーをそのまま大きくしたような

パトカーが眠たそうに、そこにいて。

その前には、

さっきの人が、警察の職務にふさわしくないほどの素敵ともいえる

笑顔で立ってたから、なんか楽しくなっちゃって。

でも、運転席と助手席には別の制服の警察官が

仏頂面をして乗っているし。

あと、ダンボール箱が見当たらないけど、

うしろのトランクに入れたのかな?

不安と疑念もまた同時にあったんです。

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