許されざる年賀状

母親もいっていたが、沙織は年賀状に子供の写真を載せてくるのは

非常識だとまではいわないが、個人的には不愉快だと感じている。

できれば、そんな年賀状はもらいたくなかったけど

毎年、何通かは束のなかに紛れ込んでいた。

自宅のプリンターで印刷したのではなく

業者に作らせたような出来の一枚で目をとめた。

「 このひと誰だろう 」

寝ている赤ん坊を抱いてカメラ目線。

不敵とも思える笑みを浮かべたその女性に見覚えはなかった。

ひっくり返して宛先を見ると自分へである。

送り主の名前はない・・・。

暮れの忙しい時期に作ったので

手違いからこうなってしまったのだろうか?

しかし、これではまったく手掛かりがつかない。

すこし迷ったが、手で二つに破ってからシュレッダーにかけた。

沙織は毎年思う、

家族全員だったり、だっこした本人も写っているなら

話はまだわかるが、子供のどアップ顔写真だけとか

意味がわからなかった。

沙織は未婚で子供もいない。

とくに結婚したいとか子供がほしいからというわけでもない。

子供が嫌いということじゃない。

だが、やはり年賀状に印刷されてる子供の写真には

なにか違和感がある。

だいいち、たいていの子供はかわいくないのだ。



ふつうに干支のスタンプとかでいいんじゃないの?

あなたの子供には興味ないし。

まさかこんなこと本人にはいえない。

沙織はなんで自分がここまで子供の写真年賀状に反応するのか

わからなかった。

門松 あそこのお宅はどっしり立派だったよ。

しめ飾り ちょっと気づかなかったかな。

鏡もち やっぱり、みかんがのってなきゃ。

でも、子供の写真年賀状・・・それは許されざるものなのだ。

おせち料理 あまり食べないかな。

凧あげ 電線に引っかかるから近頃はあまり見かけない。

お雑煮 大好き! 食べたーい。

羽子板 小さい時やったよ。

お年玉 もちろん、いまでも欲しいよ~!

でも、

子供の写真年賀状・・・それは許されざるものなのだ。

沙織はいつも以上におしゃれして

人ごみかき分け明治神宮へ初詣。

でも、、子供の写真年賀状・・・それは許されざるものなのだ。

境内の屋台 たこやき買っちゃおうかな。

右翼の街宣車 お正月そうそうごくろうさま。

街はずれのセブンイレブン やっぱり寒い日はおでんに限る。

スマホにはしょっちゅう迷惑メールがくる! でも、、、

子供の写真年賀状・・・それは許されざるものなのだ。

閑散とした年始の都内、いつもは渋滞しているこの界隈。

沙織はブーツのヒールをカツカツ鳴らして急ぐ。

コートのポッケに手を入れて夕闇がかったブールバール。

南の島を想わせる調度品がいくつも置かれたレストラン。

グループ客で賑わう店内は暖房が暑いくらいだった。

年賀状を送ってきた友人はとっくに来ている。

にっこり「 明けましておめでとう ~」云々とあいさつを交わしてから。

乾杯!! といって、冷た~い生ビールを一気に飲み干した。

でも、、、、子供の写真年賀状・・・それは許されざるものなのだ。



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